『田園の詩』NO.115 「芒種の頃」 (2000.6.20)


 二十四節季でいえば、立夏(5/5)の後、小満(5/21)、芒種(6/5)、夏至(6/21)
と続きます。さらに、暦の上では、芒種の後に入梅(6/10)となっていますが、当地では
6月早々に 雨が降り出し、梅雨入りが宣言されました。

 6月1日から池の水を出すために、5月最終の日曜日に≪溝さらえ≫をして田圃に水を
取る準備をしたのですが、大雨が降ったため、池に頼ることなく田圃は一挙に水田に早
変わりしました。小雨の傾向が続いていたので、農家の人達は口々に「いい雨が降った」
と喜んでいます。

 ところで、小満と芒種は二十四節気の中でも特に忘れられた存在になっており、意味も
定かではありません。私もカレンダーに芒種とあるのを見て改めて調べてみました。

 『歳時記』には「芒(のぎ)のある穀を播種する義からきている」とありました。芒とは穀
物の先端の細いトゲのことをいいます。

 この季節、トゲのある穀物の種をまくといえば、稲のことです。つまり、モミをまき田植
えをする時期が芒種の頃なのです。(お米の何処にトゲがあるの?と思われる方は、5円
硬貨を見て下さい。稲穂の先にトゲがきっちり描かれています)

 まさに芒種のこの時期、当地では、水取りが順調に済んだので、暦とピッタリ合致する
かのように田植えが一斉に始まりました。昔は、一番の重労働だったのに、今は一番楽、
とまではいいませんが、田植機で広い田圃も見る間に片付いていきます。


      
      田植えの終わった水田は、一時期(苗が大きくなるまで)、水鏡となって
      夕日や山々を映してくれます。夕方の犬の散歩の途中、わが家の方、
      そして後方の雲ヶ岳を写真に 収めました。(家は暗くて見えませんが) (09.6.24写)



 しかし、手植えが皆無かというとそうでもありません。「植えつぎ」といって機械が植え
そこなった所を補う時には手植えをします。広い水田を歩き回る仕事はやはり重労働の
ようです。   (⇒≪NO.5「青田今昔」≫)

 また、田舎の学校では田植えの経験をさせることが最近よく行われています。この場合
もやはり手植えです。子供達は狭い水田に入り、泥だらけになりながら田植えをします。

 後で感想を聞かれると、「楽しかった」と答える子供達が大半です。貴重な経験は良と
するものの、手植えがキツイ労働であることを、しっかり教えてほしいと私は思うので
すが…。                         (住職・筆工)

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